ベンチャー企業のほうがビジネススキルが身につくという話を聞いて、ベンチャー企業への就職や転職を検討する人も多いかと思います。
たしかにベンチャー企業と聞くと、ビジネスを作っていくイメージがあり、なんとなくスキルが身につく機会が多いですよね。
しかしながら実際のところベンチャー企業でどのようなスキルが身につくのか、といったことを具体的にイメージできている人は少ないのではないでしょうか。
私は大手企業で4年ほど勤めたのちに創業10年に満たない社員規模200名程度のベンチャー企業に転職し、大手とベンチャーの両方を経験しています。
こんなことを言うと身も蓋もない感じがしますが、正直なところ、どちらに居てもビジネススキルを身につけることは可能なんです。
大事なのは、あなたがどんなスキルを身に付けたいのか、そしてそのスキルを身に付けるためには大手とベンチャーのどちらが適しているのかを知ることです。
今回は私の経験を踏まえて、大手企業とベンチャー企業とで身につくスキルの違いをお伝えしたいと思います。
Contents
ベンチャー企業で身につくスキル
課題抽出力/施策立案力/実行力
大手企業でも身につくじゃん!と突っ込みを貰いそうですが、ベンチャー企業の場合は大手に比べて遥かに自由度高く、課題抽出から施策立案、実行までおこなうことができます。
大きい会社で大きなビジネスをおこなっている場合、一つの施策を打ち出す際にも色々な部署や上司にお伺いを立てる必要があります。
運悪く、モチベーションの高くない社員や新しいことをしたがらない社員が意思決定者にいたりすると、何もチャレンジできないこともあります。
ベンチャー企業の場合、社員のモチベーションも高いことが多く、チャレンジしやすい環境にあるので自分の感じた課題を自分の施策で解決まで携わることができます。
正解のないビジネスの世界で、課題抽出~施策立案~実行といった一連の流れをトライアンドエラーを重ねてスキルを身に付けることができるのはベンチャー企業ならではだと思います。
私自身、大手時代はひとつの施策を打ち出すのに様々な部門のお伺いを立てるのに苦労した経験がありますが、ベンチャー企業ではそのような苦労はほとんどありませんでした。
自分の感じた課題点を改善するための施策を打ち出し実行してやり切るというスキルはベンチャー企業の方が身につきやすいと感じます。
迅速なキャッチアップ/適応力
ベンチャー企業、特に組織が成長しているフェーズの場合、社内の環境や事業の進め方についても一日単位で変化が起こります。
上でもお伝えした通り、チャレンジしやすい環境にある分、各社員が打ち出した施策にも協力していくことになりますし、成果が出るようであればその施策を標準業務にするための社内スキームの整備に取り掛かる必要もあります。(そのあとより良い施策があれば、折角作ったスキームも遠慮なく壊します(笑))
ここまでスピーディーだとベンチャーに行くのが不安という方もいるかもしれませんが、大丈夫です。慣れます。
ここら辺は本当に慣れの問題なので気にする必要はありません。最初はみんな苦労しますが本当に慣れますから(笑)。どちらかというと一緒に働くメンバーと共通の意識を持って働けそうかを気にした方が良いです。
基本的に同僚とのコミュニケーションがうまく取れれば、協力して乗り越えられます。
ビジネスの全体像を理解し仕事を型化するスキル
先ほどお伝えしたように、様々な施策が打ち出されるのに合わせて社内体制を整える必要があります。
そうするとその仕事のスキームを特定の型に落とし込む必要があります。
これは各部門との連携も考え、全体最適を考慮して型化する必要があります。(しかも結構な頻度で作ったり壊したりといったことがあります)
全体像を理解して仕事を型化するということを何回も経験できるのはベンチャー企業ならではです。
この経験を複数回積むことで、オペレーション構築においての急所も理解できるようになります。
逆境を乗り越えるために考え抜くスキル(その事業がこけたら終わり)
ベンチャー企業は大手企業ほど財政基盤が安定しているわけではありません。
ひとつの事業がこけることの影響は甚大です。
そのような日々必死な状況で仕事をしているわけですが、事業環境が思いっきり変化し逆風が吹くこともあれば、トラブルで危機的状況に立たされることもあります。
まさにベンチャー企業らしい状況ですが、こんな時でもなんとかピンチをチャンスに変えるための施策を打ち出さないといけません。
とにかくチームメンバーで考え抜き迅速に答えを出すという経験はベンチャー企業ならではです(ランナーズハイ的な楽しさもあります)
(スキルとはちょっと違うけど・・・)自己責任マインド
スキルとは少々異なりますが、ベンチャー企業では自己責任マインドも醸成されやすいです。
ベンチャー企業は小回りが利く分、個人の判断でアクションする場面も多くあります。
その分、アクションを取った内容については自己責任がつきまといます。
大手企業でも自己責任で仕事しているという人も多いと思いますが、社内承認の手数とかを考えると責任はかなり分散されています。
正直責任の所在をあいまいにして個々人の責任は弱くなっているのが大企業の文化だったりするので、ベンチャー企業の方が自己責任マインドや仕事へのコミット力はつくように思います。
大手企業で身につくスキル
多様なステークホルダーの巻き込み力/根回し力/交渉力
大手企業では大規模な事業をおこなっていることも多く、その分関係者も多くなります。
そうすると一つの事業を変革するにも多くのステークホルダーに根回しをし、まとめ上げ、ファシリテートしていく必要があります。
正直これは結構な忍耐力が必要になります。合理的に進まない部分もあるので人間関係図を作ったり、キーマンへの接触ストーリーを創り上げたり、途中で話が頓挫しないように細心の注意を払う必要があります。
事業やプロジェクトの規模が大きくなればなるほど複雑になるので、人間力と分析力の双方を高め交渉スキルを身に付ける必要があります。
マネジメント力
大手企業にいると、多くの人と関わって仕事をするため、それぞれのメンバーに仕事を振ったり、それを管理したりといったスキルが必要になります。
勿論ベンチャー企業でもこのような経験をすることはあるのですが、大手だと子会社社員をまとめたり、協業企業の進捗をまとめたりなど、マネジメント範囲は自社に留まりません。
各々の組織状況やインセンティブを理解した上でのマネジメントが必要になるため、ベンチャー企業よりも求められる能力は高くなります。
個人的には自分の経験したことのない仕事をしているメンバーの進捗管理もしないといけなかったことは大手ならではの大変な経験でした。
プレゼンテーション力/資料作成力
大手企業では社内の承認を得るにしても、顧客への提案をするにしても、協業企業へ話を持っていくにしても、とにかく頻繁に資料作成をすることになります。
そうすると当然資料作成の能力やテンプレートのストックも多くなります。
コンサルティングファームに比べるとレベルは劣りますが、大抵の社員は多量の提案資料を作成することで資料作成にはある程度自信を持って取り組めるようになります。
一方でベンチャー企業では資料の体裁にはそこまでこだわらないですし、そもそもそんなに高頻度で資料作成をすることはありません。
もちろん資料の利用場面によっては体裁にこだわりますが、慣れた人がひとりでやることも多く、各個人に新たにスキルが蓄積されることは少ないです。
基本的な社会人マナー
また、よく言われることですが基本的な社会人マナーについては大手企業の方が身につくことが多いです。
特に若い段階で大手企業に入社すると、先輩社員から基本的なマナーについても厳しく指導を受けるため学生から社会人に上がった際の常識のズレを認識することができます。
ベンチャー企業だと、最初からベンチャー企業に勤めているという人も多く、誰も指導しないため(そもそもそこを重要だと思ってない節もありますが)社会人マナーを知らないまま30歳、そして誰も注意してくれないという状況も有り得ます。
仕事を振る際にも事前の確認がなかったり、部門上司を飛び越えて勝手に話を進めてしまったりなど、大手では有り得ない状況も有り得ますし、上座や下座などの常識的なマナーを知らないということもありえます。
まぁこれがベンチャーの良さでもあるのですが、基本的な社会人マナー、スキルについては大手企業の方が身につきやすいと言えるでしょう。
まとめ
最初にもお伝えした通り、大手企業よりもベンチャー企業の方がビジネススキルが身につくという訳ではなく身につくスキルに違いがあります。
ベンチャー企業と大手企業では求められるスキルが全く違うからです。そしてどちらが良いという訳でもありません。
ちなみに私は大手時代は根回しばかりでビジネススキルが身についてない!!と思ってましたが、一度ベンチャー企業に勤めたり、エージェントに相談することで上記のようなスキルが評価されるということを理解できました。
粘り強く交渉や根回しができるというのは大きな仕事をやる上では必須スキルなので、将来的に大きな事業を手掛けたいということであれば仕事がしたいという人は身に付けておきたいスキルです。
ご自身が今後どのようなキャリアを目指したいのか、どのようなスキルを身に付けたいのかによってベンチャー企業が良いのか大手企業が良いのかは異なります。
ご自身の志向性を整理した上でより良い選択をしていただければ幸いです。
おまけ
ベンチャーから大手には戻れないは嘘というお話
ちなみに、少し前まではベンチャーから大手への転職はできないという考えが一般的でしたが、最近はその傾向も薄れています。
現に私はベンチャーを一年ほどで退職したのちに大手シンクタンクへの転職もできていますし、老舗大企業へ転職する道も残っていました。
今の社会は両方を経験した上で判断することも可能な時代だと思うので特にお若い方(20代)であれば仮にベンチャーへの転職で失敗したと思ってもいくらでも取り返しが可能だと思います。
私の場合はむしろベンチャー企業経験ということが評価されて大手に戻れたので、徐々にチャレンジできる時代になっていると思います。
ベンチャーでの仕事に興味のある方は自分の志向性を整理し、下調べをしっかりした上でチャレンジしてもらえればと思います。
ベンチャー企業に転職する際の確認事項や私がベンチャーを1年で退職した理由など、実際の私の経験を通しての記事も複数あるので是非参考にしてください。